「住宅ローンの巻戻し」

今回は、住宅資金特別条項を利用した個人再生手続きのうち
住宅ローンの巻戻し」という手続きについて紹介します。

一般的に、住宅ローンの返済が滞り続けると
銀行は、保証会社へ保証の履行を請求することになります。

そして、銀行からの請求を受けた保証会社は
保証契約に基づき、銀行に対して残ローンを代わりに支払うこととなります
(「代位弁済」と呼ばれています)。

保証会社は、銀行に対して代位弁済を行ったあと
代位弁済した金額を債務者本人に対して一括で支払うよう請求しますが
到底支払える金額ではありませんので
抵当権を実行し不動産競売の申立てを行います。

不動産競売の申立てがなされたら
競売手続きの流れに沿って売却の処理が進められ
買い手が見つかり次第退去を余儀なくされます。

しかし、保証会社が銀行に代位弁済をしてから6ヶ月以内
個人再生手続き開始の申立てがなされれば
住宅資金特別条項を定めることができます。

これが何を意味するかというと、住宅資金特別条項のある再生計画の認可決定が確定した場合は
保証会社による銀行への代位弁済はなかったものと扱われます

そして、保証会社の代位弁済がなかったことになると
住宅ローン債権は銀行へ再び戻ってくることになり
債務者と銀行との間で住宅ローンの契約が復活する
ことになります。

このような手続きを、「(住宅ローンの)巻戻し」と呼んでいます。

一度失いかけた自宅を維持できることになるわけですから
債務者にとっては大変有利な制度といえます。

では、この「巻戻し」制度を利用するために
どのようなことが必要になってくるのかを見ていきます。

 

巻き戻しの要件

    1. 保証会社が銀行に対し残ローンの全額を代位弁済した日から6ヶ月を経過するまでの間に、裁判所へ再生開始の申立てがなされたこと

    2. 住宅資金特別条項を定めること

大きく取り上げると、以上の2点になります。

住宅ローンの契約を復活させることに意義があるわけですから
2の要件は手続きをする上で見落とすことは考えにくいでしょう。

したがって、この巻戻し手続きにおいて最も重要なのは
代位弁済日から「6ヶ月以内」に、
裁判所に対して再生手続きの申立てをしなければならない

という点になります。

なお、保証会社による代位弁済がなされた日は
債務者が代位弁済の通知を受け取ったか否かとは無関係なので
仮に債務者がその代位弁済通知を受け取ることが遅れたとしても
裁判所への申立てまでの期限が延長されるわけではない
ことに注意が必要です。

最後に

債務者にとって有利な制度となっている「巻戻し」の手続きですが
住宅ローン債権者である銀行や、その保証会社にとっては
非常に面倒な手続きとなります。

そうすると、この制度を利用する場合、債権者の協力がやはり大きなカギとなってきますので
事前に債権者側との協議をしながら準備をすることによって
申立て後の手続きがスムーズに進めやすくなります。

弊所では、豊富な実績に基づき、そのようなお手伝いが可能です。
すでに住宅ローンの支払いが相当遅れてしまっているという方も
諦めずにぜひお問合せください。

 

(2017年5月10日 執筆