自己破産
自己破産(じこはさん)とは
自己破産(じこはさん)とは,多額の借金を負った債務者が,自己の資産額を上回るほどの負債を抱え(債務超過),もしくは継続して支払いをすることができない状態にある場合(支払不能),裁判所の決定により,その持てるすべての財産を換価して債権者全員に公平に分配することにより,債務者の経済的再生を図ることを目的とする制度のことをいいます。
もっとわかりやすく説明すると,借金で首が回らない状態になったら,自分の財産をすべてお金に換えられるだけ換え,そのお金を各借入れ先の金額に応じて均等に振り分けて返済に充てることで,返済しきれなかった残りの借金についてはチャラにしてもらおうという制度です。
自己破産という言葉自体は,比較的一般に知れ渡っている言葉であり,聞いたことがないという人は少ないと思いますが,その制度自体は,「人間失格」だとか「人生の終わり」などのようなマイナスのイメージをもっていらっしゃる方が多いのではないでしょうか。
もちろん他人には知られたくない手続きかもしれませんが,一般に抱かれているようなネガティブな印象やデメリットはほとんどなく,実際には債務者の経済的再生を目的として国が認めた前向きな制度であり,メリットがはるかに大きい制度といえます。
自己破産のメリット
借金の返済から解放される
すべての財産を失うわけではなく,一部の財産を残すことができる
精神的な苦痛から解放され,生活を立て直すことができる
自己破産のデメリット
破産後の数年間は,新たに借入れをすることができず,ローンを組んだり,クレジットカードを作成したりする際に,審査が通らなくなる
官報に掲載される(※官報とは,国の発行する新聞のようなもので,一般の人が目にする機会はほぼありません)
自己名義で不動産を所有している場合には転居を要し,処分しなければならない
破産手続き中は,一部の資格が必要な職業について就くことができなくなる
税金や社会保険料といった公租公課の支払いは免除されない
破産手続き中は,自由に引越しをすることができない(禁止されているわけではありません)
破産手続き中は,郵便物がいったん破産管財人に転送される(財産の有無や債権債務の調査が目的であり,問題なければ返却してもらえます)
よくある質問
破産すると,会社・学校や近所の人などに知られることはありますか?
基本的には,ほとんどありません。国が発行している「官報」に掲載はされますが,一般の人が目にすることはほとんどありませんので,周囲の人が知る機会は少ないです。
債権者から給与の差し押さえを受けてしまう場合は,勤務先に知られてしまう可能性が高くなります。
自宅に債権者(貸金業者など)が来ることはありますか?
原則ありません。破産手続きを弁護士に依頼した場合,債権者(貸金業者)は債務者に対して直接取立て行為をすることができなくなるため,貸金業の登録をしている業者であれば取立てに来ることはないでしょう。
持っている通帳は捨てなくてはならないのでしょうか?
そのような必要はありません。
保険に加入している(生命保険や子どもの学資保険など)のですが,それらはすべて解約しなければなりませんか?
必ずしも解約が必要ではありませんが,解約返戻金(かいやくへんれいきん)が20万円を超えるような場合は,一度ご相談ください。
父の名義の自動車がありますが,これからは乗れなくなりますか?
いえ,そのようなことはありません。自己破産で処分が必要になるのは,原則として債務者自身(名義)の財産であり,家族や身内の財産が処分されるというケースはありません。ただ,名義は家族でも実際にお金を出したのは本人だという場合には注意が必要です。詳細はご相談ください。
妻が住宅ローンの保証人になっているのですが,どうなりますか?
住宅ローンの主債務者であるご主人が自己破産する場合,債権者はご主人から支払を受けることができなくなるので,保証人である奥様に対して請求を開始することになります。その場合,奥様にも支払い能力がないとすれば,奥様も破産手続きを行う必要が出てきます。
税金を滞納していますが,自己破産すればこれも支払わなくてよくなりますか?
残念ながら,国税,地方税,年金保険料,健康保険料などの公租公課の支払いを免れることはできません。破産手続きを行ったとしても支払っていかなくてはなりませんので,具体的な支払方法については役所とご相談ください。
破産手続きを依頼する場合,どのようなことが必要になりますか?
裁判所に提出する申立書に添付しなければならない書類の収集と,毎月の家計収支表(申立書用の定型書式があります)の作成にご協力いただきます。詳細については,ご依頼の際に親切・丁寧にご説明させていただきますのでご安心ください。
また,上述の書類をご持参いただく際など,申立てにあたって細かな聴き取りが別途必要になる場合もありますので,裁判所への申立てまでに事務所へ何度か来所していただく必要がありますので,あらかじめご了承ください。
「管財事件」と「同時廃止事件」
自己破産の手続きには2種類あり,「管財事件」と「同時廃止事件」に区別されます。
本来の意味での破産手続きとは,管財事件のことを指し,その具体的な手続きの流れは,債務者が裁判所に対して破産の申立てを行い,裁判所により破産手続きの開始決定を受け,破産管財人が選任され,破産債権の確定と破産財団の管理・換価,債権者への配当を経て,破産手続きの終結決定,免責をもって終了します。
しかしながら,自然人(法人や会社ではない生身の人間)の破産事件では,債務者に換価を要するほどの財産,債権者に対して配当すべき財産がないため,破産管財人の選任などの一部の手続きが省略された同時廃止事件で処理されるケースが多くを占めております。
おおまかな区別をすると,財産を多く持っている場合(加えて,免責不許可事由に該当する場合)は管財事件となり,財産を(ほとんど)持っていない場合は同時廃止事件となります。
自己破産の手続きの流れ