「浪費又は賭博その他の射幸行為」

 前回は免責不許可事由について説明をしましたので,今回は,そのうちの「浪費又は賭博その他の射幸行為」について説明したいと思います。

破産法252条1項4号
「浪費又は賭博その他の射幸行為をしたことによって著しく財産を減少させ,又は過大な債務を負担したこと」

 

 「浪費」とは,いわゆる世間一般で言われているところの無駄遣いを指す言葉です。例えば,外食による支出や,商品購入等の買い物が極端に多かったり,キャバクラや風俗店,ホストクラブ等へ頻繁に通っていたりする場合は,これに当たると判断される可能性があります。

 「賭博」とは,ギャンブルのことで、「射幸行為」というのは,偶然の利益や成功を目的とする行為で,ギャンブルによく似たものを言います。これらの一般的な例は,競馬,競輪,競艇,パチンコ,パチスロ等や,知人間でお金を賭けて行う麻雀や近年ニュースで取り上げられている野球賭博もギャンブルそのものに該当し,違法であるか合法であるかは問われません。また,他にも宝くじtotoのスポーツ振興クジなども射幸性のあるものとされ,株取引,FX取引,先物取引なども「射幸行為」に含まれます。 

 破産手続きの中で,免責不許可事由に該当するかどうかは,上記の行為があったことに加え,上記の行為が原因で「著しく財産を減少させた」又は「過大な債務を負担した」かどうかによって判断されます。したがって,単にパチンコや競馬をしたとか,風俗店に通っているとかというだけでは免責不許可事由にあたるとは判断されません。

 また,どれくらいの金額に達すれば浪費と判断されるのかは一概に言えず,個別の事情を総合的にみて判断されることになります。

 ですので,具体的には,本人の収入,資産,生活状況などからみて相応な支出であったかどうか,生活を圧迫する要因となっていないかが判断基準となります。

 

最後に

 上述のとおり,仮に「浪費又は賭博その他の射幸行為」に該当するとしても,それが直ちに免責不許可事由となるわけではありません。

 過去の前例からみても免責が許可されない事例は極めて少なく,よほど自己の収入に釣り合わない莫大な金額を費消してしまい,なおも改善する姿勢が見られないと言えるような例外的な場合でない限り,裁量免責が認められる傾向にあります。

 また,裁判所へ手続きを申し立てる前の段階で,万が一免責不許可となりそうな事情を秘めているようなケースでは,破産手続きではなく,個人再生手続きという別の手続きを検討するという選択肢もありますので,是非お気軽にご相談ください。