<事案の概要>

 〇相談者様は,突然の勤務先の倒産により解雇されることになった。

〇賃貸マンションで一人暮らしである。

〇不動産や車などの財産はなく,勤続年数もそれほど長くなかったので退職金が出る可能性はなかった。

〇給与が1ヶ月遅れになっていた。

 

 

<解決に至るまで>

 相談者様から相談の問い合わせがあった日,相談者様は,突然勤務先から倒産を理由に「2日後に解雇する」と通知されたそうです。当然相談者様は,あまりに突然の出来事でしたので,慌てた様子で電話をかけてこられました。

 会社からの未払いを含む給料は,労働者健康安全機構未払い賃金立替制度により支払いを受けることができますが,支給されるのは本来の賃金の8割相当額であることと,申請から支給まで一定の期間を要することから,借入先への返済はおろか,当面の生活費を工面することもままならない状態でした。

 そこで、相談者様には,ひとまずハローワークへ行き,失業の認定を受けて雇用保険の給付を受けられるよう手続きしてもらい,生活費を確保してもらうようにしました。

 そして,私たちもすぐさま破産手続きの準備に取り掛かることとしました。

 相談者様は,不動産や車を所有しているわけではなく,当該勤務先での勤続年数も5年に満たないものでしたので,退職金が発生する余地はありませんでした。もし相談者様に退職金が発生する事情があった場合,その金額次第では,簡易な手続き(同時廃止事件)でなく,複雑な手続き(管財事件)によらなければならないところでしたが,今回のケースではその問題が生じなかったため,同時廃止事件として破産申立ての準備を進めていきました。

 なお,破産申立て準備期間中に,労働者健康安全機構により立て替えられた金額が支給され,その立替賃金総額が,同時廃止事件の基準額である20万円を超えていました。

 しかし,失職後の国民年金・国民健康保険料や税金等の支払いが遅れていたため,「有用の資(ゆうようのし)」として,これらの支払いに充てることが認められ,同時廃止事件のまま進めることができました。

 その後は,特に免責不許可事由もなく手続きが順調に進み,相談者様は免責を得ることができ,現在は新しい仕事も見つかって第二の人生のスタートを切ることができました